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院長ブログ

更年期のデリケートゾーン(陰部)のかきむしる程のかゆみの原因は?治療法や予防法を産婦人科女医が徹底解説!

小さい頃からアトピー性皮膚炎がある私は、かゆみが出てきたときに「掻いちゃいけない」と思いつつ、汁が出るくらい掻きむしってしまうことがあります。

掻いているその時は「気持ちいい~!」と思うのですが、後から状態の悪くなった皮膚を見て「やっぱり掻かなければ良かった、、、」と後悔します。搔いたその時はいいけれど、掻いた後は掻く前以上に状態が悪くなり余計にかゆくなってしまうんですよね。一時的に症状が取れればいいや、と掻くことと治療することを繰り返すと、その部分の皮膚が固く厚くなったり、黒ずんで色素沈着なども起こってきます。

この50年から学んだのは、まずかゆくならないようにすること、そしてそれには何といっても「保湿」が大事、ということ。

デリケートゾーンのかゆみは、ドイツやアメリカの調査では約10~20人に1人、小林製薬の調査では女性の60%程度はいる、とのこと。

このデリケートゾーンのかゆみ予防にも、やっぱり「保湿」が大事です。でも顔と違って、カサカサしていても、かゆみがあっても、黒ずみが出来ても、デリケートゾーンは普段見えないところだから、スキンケアをおろそかにしがちなんですよね。

「そうか、じゃあスキンケアをすれば私の痒みは良くなるんだ!」と思われた方。でも実は、、、デリケートゾーンのかゆみの原因は、スキンケアを怠っているから、だけではないのです!

きちんと治療をしなければ治らない病気も隠れている!ということを今回はじっくりお話していきたいと思います。

更年期のデリケートゾーン/陰部のかゆみの原因とは?

女性ホルモン減少による影響「更年期特有の身体の変化と症状」

女性は多かれ少なかれ、更年期(閉経の年齢の前後5年間)になると身体の変化を感じ始めます。

閉経の数年前からは月経の周期が不規則になり、月経血の量が減るなどの変化、それだけでなく肌や髪のツヤが無くなるなどの見た目の美しさにも変化が見られます。

それと同時に、顔のほてりやのぼせや発汗などの自律神経の乱れから起こる体の症状が出てきます。また、イライラが抑えられなくなる、逆に気持ちが落ちるなどの精神的な症状が出る人もいます。

更年期のデリケートゾーンの乾燥・かゆみの正体「萎縮性膣炎」

40代になると始まり、閉経してから徐々に増えていくのは、頻尿・尿漏れ・膀胱炎を繰り返すなどの泌尿器の症状や、黄色味の強いおりものが出る・におう・乾燥する・かゆい・出血するなどの生殖器の症状、つまり「萎縮性膣炎」です。

やがて、高血圧・糖尿病・脂質異常などの生活習慣病の出る方が増えてきて、最終的に記憶などの脳の衰えの症状が出ます。

これらはすべて、年齢を重ねるとともに女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下してくるために起こる身体の変化です。女性ホルモンは女性にとって、若さを保つためにとても大事なものなのです!

女性ホルモン減少がもたらすデリケートゾーンのトラブル

さて、更年期になると、急に年齢を感じてアンチエイジングに気をつかう女性は多いですが、見た目の美ばかり追求して、忘れられがちな場所があります。それがデリケートゾーンです。

女性ホルモンの分泌が減ると、黄色味の強いおりものが出る・におう・乾燥する・かゆい・出血するなどの生殖器の症状や、頻尿・尿漏れ・膀胱炎を繰り返すなどの泌尿器の症状が出るようになる、と書きましたが、これは「萎縮性膣炎」といって、デリケートゾーンが老化(おお!言いたくない言葉を使ってしまいました!)するために起こる症状なのです。

老化はもっと適切な言葉を使うなら、粘膜や皮膚の「乾燥や萎縮」です。また、「萎縮性膣炎」の症状は更年期以降の女性であれば、多かれ少なかれ誰でも感じるようになる症状です。

デリケートゾーンは見た目以上に年をとる?

ちょっと話がそれますが、私の姉は医者では無くて喫茶店のオーナーです。喫茶店を始める前は、大学で工学博士になり、男性の多い職場で国家機密のものを色々飛ばす実験などに関わった仕事をしていました。

ある飲み会に姉が参加した時、酔いの回ってきた男性たちが話している下ネタを「ふーん」と聞き流していたそうです。そこで気が利くある男性が「下ネタはあまり得意ではないですよね」と聞いてくれたらしいのですが、それに対して姉が「いえ別に。もともと母と妹は下ネタ医師なので」と答えた笑いを取ったそうです。確かに私も母も、中高生の前で性教育という名の科学的下ネタ(?)を60~90分も大声で話していますからね!

ということで、下ネタ医師、もとい、女性のデリケートゾーンの専門家である産婦人科医の経験から申し上げるなら、更年期以降の女性で、顔の肌や髪の見た目年齢に比べると、デリケートゾーンの見た目年齢が本来の年齢以上になってしまっている人は多いです。見えない部分だからケアをおろそかにしてしまっているのだと思います。

フェムケア・フェムテックの必要性と経済的影響

日本人にとってデリケートゾーンのケア「フェムケア」の歴史は、ほんの数年で始まったばかりだからです。NHKが行った「更年期と仕事に関する調査2021」によると、生理痛やPMSなどによる労働力の低下による経済損失は年間で6,828億円、更年期における離職に伴う経済損失が、女性で年間およそ4200億円(男性でおよそ2100億円)に上るということが分かりました。

そのため、内閣府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」において「フェムテック」の推進を明記しました。

フェムテックとフェムケア

「フェムテック(Femtech)」とは、テクノロジーの力で女性の健康課題を解決する製品やサービスのことで、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた新しい言葉です。

さらにその中でも「フェムケア」とは、女性の月経、妊娠、更年期など女性の体や健康のケアをする製品やサービスを指し、3大フェムケアは「脱毛、洗浄、保湿」といわれています。

子どもから高齢者まで──デリケートゾーンのかゆみの相談例

実際、デリケートゾーンのかゆみの悩みで産婦人科に相談に来られる女性は、毎日大勢います。

それも、小さい女の子から80歳を超えるご年配の方まで、さまざまです。そして、デリケートゾーンにかゆみを引き起こす原因もさまざまです。

保育園〜小学生のかゆみの原因/拭き方・洗い残しなど

保育園や小学生の女の子のかゆみは、主にトイレの後に上手に拭くことができていない、ちゃんと汚れを洗えていないなどの原因で起こります。本人がかゆそうにしている、もしくは下着に普段はつかないおりものがついて汚れている、などに気づいて、保護者に連れられて相談に来るパターンがほとんどです。

思春期のかゆみの原因/ナプキンやおりものシートのかぶれ

月経が始まったころから出てくるかゆみは、おりものシートやナプキンが肌に合わずかぶれてしまう、「接触性皮膚炎」というものが原因のことが多いです。また、汚れたおりものシートやナプキンを長時間付けていることや、トイレ後のデリケートゾーンの拭き方に伴い、主に肛門付近の大腸菌などの雑菌が膣内に入ってしまうことで起こる「細菌性膣炎」によるものがあります。

20代のかゆみの原因/下着やファッションによる刺激

ファッションに一番気をつかう20代くらいの若い年齢の女性では、下着の素材が肌に合わない、きつすぎるズボンなどでこすれた、などでかゆみが生じることもあります。おりものシートやナプキンや下着は自分に合うものをしっかり選んでほしいなと思います。

性行為後のかゆみの原因/性感染症やカンジダ膣外陰炎

性行為を経験すると増えてくるのが「性感染症」によるかゆみです。かゆみが強く出る性感染症は、カンジダ膣外陰炎、トリコモナス膣炎です。ただし、カンジダ膣外陰炎は性的接触後に起こる場合だけでなく、疲労の蓄積・月経後・風邪を引いた後・妊娠中などの免疫力が低下した後に発症する場合や、何かの治療で抗生物質を内服したために膣内の環境を守る良い菌が減ってしまいカンジダ菌が増えることで発症する場合もあります。

更年期と若年層に共通するかゆみの原因とは?

さて、先ほども書きましたが、女性ホルモンは若さを保つ物質ですから、月経を起こすだけでなく、体のあらゆるところの潤いを保つ働きがあります。なので更年期のころになると、女性ホルモンの分泌が減ることで膣粘膜や外陰部の皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸が少なくなり、粘膜や皮膚の乾燥が進み、かゆみが生じることがでてきます。

また、若い20~30代の女性で月経不順のある人やピルを使っている人は、女性ホルモンの分泌が少なくなっていることがあり、同じように膣粘膜や外陰部の皮膚の乾燥が起こりかゆみにつながる人もいます。

症状をセルフチェック!かゆみや不快感を見極める方法

デリケートゾーンの具体的な症状一覧

①かゆみ

乾燥、汚れ、むれ、摩擦、性感染症(カンジダ膣外陰炎・トリコモナス膣炎)、女性ホルモンの低下が原因で起こります。原因によって、一日中症状がある、良くなったり悪くなったりする、体の温まる入浴後や布団に入った後に症状が強くなる、などが違います。

性感染症が原因の場合、症状はかなり強く日常生活に支障をきたす場合が多いです。

②違和感や痛み

乾燥、摩擦、性感染症(クラミジア感染症や淋病による性交痛・腹痛)、女性ホルモンの低下が原因で起こります。

③出血

乾燥、摩擦、性感染症(クラミジア感染症)、婦人科がんが原因で起こります。

④におい

汚れ、むれ、性感染症(トリコモナス膣炎)、抗生物質の投与や女性ホルモンの低下による雑菌の繁殖が原因で起こります。ただし、知っておいて欲しいのは、おりものは無臭ではないということです。膣の中を良い状態に保つ膣内常在菌はデーデルライン桿菌といって乳酸菌の一種なので、ちょっと酸っぱいようなにおいがすることが普通です。

そして進行した婦人科がんでもない限り、服を着ている状態でおりもののにおいが周りの人に感づかれるなどということはありませんので、安心して下さいね。

⑤おりものの異常

さまざまな原因による膣内の雑菌の繁殖や炎症、性感染症(クラミジア感染症・淋病・トリコモナス膣炎・カンジダ膣炎)、女性ホルモンの低下、婦人科がんが原因で起こります。

⑥赤み・ひび割れ・腫れ

さまざまな原因による膣内や外陰部の炎症、摩擦、皮膚の掻き壊しが原因で起こります。

*①~⑥をまとめると次の表になります

 乾燥汚れむれ摩擦性感染症女性ホルモンの低下抗生剤投与婦人科がんアレルギー
かゆみ 
違和感や痛み     
出血     
におい   
おりものの異変    
赤み・ひび割れ・腫れ  

おりものの特徴疑われる病気
黄色黄緑色、悪臭がある
血が混じる
トリコモナス膣炎
婦人科がん
量が多い非特異性膣炎
下腹痛、排尿痛がある淋病
クラミジア感染症
白色カッテージチーズ状
かゆみが強い
カンジダ膣炎
透明排卵期に限る正常な状態
量が多い
黄色のおりものが混じる
子宮頸管炎

詳細な症状から原因を探ろう!

ケース1:アレルギー(接触性皮膚炎)が原因のかゆみ

新しい下着・おりものシート・生理用ナプキンを使用した後、またはラテックス製のコンドームの使用後にかゆみや皮膚の赤身が生じた

⇒アレルギー(接触性皮膚炎)が原因

ケース2:むれが原因のかゆみ

長時間濡れたものがデリケートゾーンに長時間触れていたためにかゆみ、違和感や痛み、皮膚の赤みや腫れが生じた

⇒デリケートゾーンのむれが原因

ケース3:摩擦が原因のかゆみ

きつい下着やズボンなどをはいたためにかゆみ、違和感や痛み、出血、赤みや腫れが生じた

⇒デリケートゾーンの摩擦が原因

ケース4:汚れが原因のかゆみ

かゆみ、におい、いつもと違うおりものが出る、皮膚の赤みや腫れが生じた

⇒トイレ後の拭き方が不十分、うまく洗えていない、などデリケートゾーンの汚れが原因

ケース5:乾燥が原因のかゆみ

かゆみが一度起こるとおさまらない、常に違和感や痛みがある、ちょっと拭くだけで血が付く、皮膚の赤みやひび割れが生じた

⇒デリケートゾーンの乾燥が強い(アトピー性皮膚炎の状態が悪い人、強い洗剤で洗いすぎ、など)が原因

ケース6:ピル、産後の無月経期間などホルモン低下が原因のかゆみ

皮膚だけでなく膣の中も、常になんとなくむずがゆく違和感や痛みがある、黄色味の強いおりものが出る、おりものがにおう、おりものに出血が混じる、何をしても治らない、掻き壊してしまい皮膚の赤みやひび割れや腫れを生じた

⇒ピルを長期に使用している人、産後に授乳で長期間月経の無い女性、更年期以降の女性などで、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することにより、皮膚や粘膜のコラーゲンが減り、乾燥することが原因

ケース7:性感染症が原因のかゆみ

我慢できないかゆみ、市販のデリケートゾーンケアのクリームを塗っても治らない、膣の中までかゆい、痛みが気になる(性交痛や下腹部痛)、おりものに血が混じる、おりものが増えてにおう(酸っぱいにおいが強い、生臭い、卵が腐ったような匂いがする)、明らかにいつもとおりものの性状が違う(ヨーグルト状、酒かす状、カッテージチーズ状、泡立っている、膿状)、膣の粘膜や外陰部が赤く腫れぼったい、などが生じた

⇒性感染症(クラミジア感染症、カンジダ膣外陰炎、トリコモナス膣炎、淋病など)が原因

ケース8:カンジダ膣炎が原因のかゆみ

性感染症の中でもカンジダ膣炎は、病気治療のために抗生物質を使用した、病気のために体力が落ちた、仕事や家事が忙しくて強い疲労を感じた、免疫力の低下している妊娠中、などからも生じることがある。

ケース9:婦人科がんが原因のかゆみ

月経以外でたびたび出血する、閉経した後なのに出血する、におうおりものが出る、水っぽいおりものが多く出る、が生じた

⇒婦人科がん(子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がん、卵管がん)が原因

早期相談&早期治療!

何をしても治らない2週間以上続くデリケートゾーンの症状は、早めにご相談ください!!


放置やかきむしるのはNG!かゆみを放置するとどうなる?

かゆみを放置する人が多い理由とは?

すぐにご相談いただき、原因を突き止めれば2週間以内には症状がおさまるデリケートゾーンのかゆみ。

でも・・・

「皮膚のかゆみだから皮膚科にいくべき?でも場所が場所だけに、行きにくいな」
「仕事が忙しくてなかなか病院へ行けない」

という理由で症状が出てから少し時間が経ってご相談に来られる方が多いです。

かゆければ掻いてしまうのは当然のこと。

掻くほど悪化する?かゆみが引き起こす悪循環

でも、掻けば掻くほどかえってかゆみの原因になる物質が出て、かゆみは強くなっていってしまうのです。そして掻けば皮膚に傷がつき浸出液や血が出ることで炎症が悪化し、雑菌がつけば膿がたまったりとびひ(膿痂疹)になって炎症の強い傷があっという間に周りに広がってしまう、などの可能性があります。

慢性化で皮膚が変化…放置による深刻な影響

特に年単位で悩んでおられたご年配の方は、皮膚の炎症が慢性化してしまっており、ご相談に来た時にはデリケートゾーンの皮膚が白く変色していたり、厚く硬くなってひび割れなどを起こし正常の皮膚が無くなってしまっている人が多いです。

さらに、ステロイドの入った薬を使わなければ症状は取れず、その薬を塗ればその一瞬はかゆみの症状は取れるけれど、塗るのをやめると症状がぶり返す、と薬が無くなるたびに病院に来られ、治療が長期化することが多いです。

かゆみが心と生活に与えるストレスとは?

パートナーの方との性生活を楽しまれている方にとっては、悩むほどのかゆみがあれば、もちろん性生活への悪い影響が出てしまうのは、簡単に想像できることと思います。場合によっては、二人の間に溝を作ってしまうことにもなりかねません。

また、私はアトピー性皮膚炎を長い間抱えていますので、「かゆい」ということがいかに精神的にも負荷がかかるかを良く知っています。かゆみが強ければ、まず色々なことに集中できません。

搔き壊してしまえば、どんなに皮膚に優しい素材を身につけていても、肌に何かが当たっているだけ刺激になって余計にムズムズして、ずっと裸でいたいとさえ思うようになります。

掻けば掻くほど、周りの部分にかゆみが広がってドンドンかゆみは強くなっていきます。かゆみで眠れない、常にイライラしてしまう、そのせいで気分が憂うつになる、なども日常茶飯事となってしまいます。

病院に行くべき?受診の目安を解説

まず、デリケートゾーンにかゆみを感じたら、かゆみの原因として思い付くものはさっさと手放しましょう。そして自問自答してみてください。

疲れていないか、病気の後なのか、抗生物質の使用はあったか、今は月経の周期のいつに当たるのか、他の体の部分のアトピー性皮膚炎がひどくなっていないか、何を身に着けていたのか、何か新しいものをつけなかったか、濡れたものを長時間つけっぱなしにしていなかったか、性行為の後か、更年期以降の年齢にあたるか、などなど、、、。

すぐに病院を受診できないようであれば、ドラッグストアなどで市販のデリケートゾーンのかゆみ用のクリームなどを購入しても良いでしょう。

2週間経っても症状が改善しない場合

でも、2週間経っても症状が改善して来ない場合、もしくは症状が出てから数日でもどんどん症状が悪化してくる場合、かゆみが強くて日常生活に支障が出る場合、よく分からない発疹(ぶつぶつ)まで出来てしまった、などは、なるべく早く病院を受診してください。

婦人科を受診しよう!

出血・悪臭・しこりを伴う場合は、性感染症や婦人科がんの可能性もあります。

皮膚の症状だから皮膚科かな、と思って受診される方も多いですが、男性医師の場合には女性のデリケートゾーンを診るのを遠慮して、患部を確認せずに症状だけでお薬を出して終わりになってしまう先生もおられます。

それでは、本当のかゆみの原因は分からないままになってしまいます。是非、女性のデリケートゾーンの悩みは、デリケートゾーンの専門家である婦人科に、まずはご相談ください!!

かゆみの治療方法

病院を受診された場合には、次のようなものをおすすめします。

薬物療法

・軟膏、クリーム

皮膚の状態を見て選びます。乾燥が原因であれば保湿剤やワセリン、掻き壊して傷になっている皮膚であれば保護剤、抗炎症作用、抗アレルギー作用の入っているものなどをおすすめします。カンジダ膣外陰炎や炎症の強い、とびひになってしまっている場合には、抗生物質の入った軟膏、女性ホルモンの低下によるものであれば女性ホルモンの入った軟膏、などを処方します。

・内服薬

かゆみが強すぎる人の場合には、抗アレルギー剤、漢方薬なども軟膏・クリームと一緒に併用してもらいます。性感染症が原因の場合には抗生物質を処方します。

・膣坐剤

膣の中の雑菌の繁殖がかゆみの原因の場合には、原因検索と共に抗生物質の膣坐剤や女性ホルモンの膣坐剤を、症状や患部の状態によって選び、処方します。

・潤滑剤

皮膚や粘膜の乾燥感があり、性行為後に必ずかゆみが出てしまう人の場合には、最初から性行為時に潤滑剤を使用するのがおすすめです。

・保湿剤の使用

皮膚のかゆみは普段からの「乾燥」の予防が一番大事です。皮膚の乾燥の強い方には保湿剤を処方します。

・サプリ

女性ホルモンの分泌の低下でかゆみが出ている場合には、女性ホルモンに似た働きを持つ物質エクオールのサプリ(大塚製薬のエクエル)を摂取してみるのも良いでしょう。

レーザー治療(モナリザタッチ)

炭酸ガスレーザーを照射しわざと傷をつけることで、自然治癒力を利用して皮膚や粘膜のコラーゲンを再生し水分保持力を上げ、乾燥や萎縮した皮膚や粘膜を構造的に若返らせる治療法です。

モナリザタッチが更年期の膣のかゆみにオススメの理由

加齢や女性ホルモンの減少で薄くなった膣の粘膜を、レーザーの力でふっくら若々しく再生させるからです。乾燥や炎症が改善され、かゆみ・ヒリヒリ感・不快感が自然と和らぎます。ホルモン治療に抵抗がある方にも安心して使える、副作用がほぼない新しい選択肢です。

新潟県初導入!モナリザタッチ

女性ホルモンに頼らない、新しいフェムケア。安心・安全なレーザー治療で、潤いと自信をもう一度!つらい膣の乾燥・かゆみ・痛みにさようなら。新潟県初導入の当院にお任せください。気になる方はお気軽にご相談くださいね!

予防方法

清潔な状態を保つ

・石鹸の種類、洗い方

皮膚のpHは弱酸性です。使用する洗浄剤も弱酸性のものを使いたいですね。保湿効果のある洗浄剤や製薬会社さんが出している敏感肌用の洗浄剤などもありますので、よく内容を吟味して選んでください。洗い方は、まず洗浄剤をよく泡立てて、その泡でデリケートゾーンのひだの部分を優しくなでるくらいで良いです。決してゴシゴシ洗うことのないようにしましょう。また、40度以上の熱すぎるお湯は皮膚の表面の油分を溶かしてしまい、乾燥につながる恐れがあります。
トイレのビデはデリケートゾーンを洗うには強すぎることが多いです。トイレで毎回洗浄したい方は、持ち運びのできる容器(ペットボトルなど)に人肌程度の温かさのお湯を用意して、上から流す程度にしてください。

・下着の素材

断然、綿・絹・麻などの天然素材をおすすめします。最近は生理用ショーツでも綿100%の素材のものが購入できます。肌がもとから弱い方はぜひ、天然素材で。さらにこだわりたい方は、無縫製、タグ無しなどもあります。

・おりものシート、生理用ナプキン

なるべく肌に当たる部分にストレスを感じない素材のものを使用しましょう。
何を使っても必ずかぶれてしまうという人は、おりものシートやナプキンを使用せずにまめに下着を交換する、吸水ショーツを使用する、布ナプキンを使用する、などが良いでしょう。布ナプキンは、何度も洗ってつかえる点が良いところですが、そこが面倒だという方には、最近は布ナプキンも使い捨て、といった手軽に始められるものも販売されています。下着や吸水ショーツ、布ナプキンを洗う洗剤も注意しないと、それでかぶれてしまう(接触性皮膚炎)になることがあります。
たとえおりものや出血がついていなくても、おりものシートや生理用ナプキンは身に着けていれば「汗をかく」という汚れが生じます。見た目に汚れていないと思っても、長時間つけっぱなしはやめましょう。汚れたものはなるべくすぐに交換して、濡れたものが長時間肌に当たらないように工夫してください。

感染予防

何度も言いますが、汚れたものはこまめに替えてください。
おりものシートやナプキンなどを使うときに手指を清潔にしなかったり、長時間使用しつづけたりすることで、黄色ブドウ球菌が増殖し毒素を産生することで、突然の高熱を伴った発疹・発赤などが起こるほか、重症だと血圧低下などのショック状態を起こす、トキシックショック症候群(TSS)となり、命に危険が及びます。汚い手指の爪で皮膚を搔き壊してしまった時にも、爪の黄色ブドウ球菌が同じことが起こしかねませんので、掻き過ぎには注意していきたいものです。かゆくても掻かない、これが鉄則です!
性感染症が気になる方は、予防効果は100%ではありませんが、必ず性交時にコンドームを使用することを忘れないようにしてください。

保湿(保湿剤、天然オイル)

「乾燥」がかゆみには大敵です。保湿剤や天然オイル(ハーブウォーターやキャリアオイル)などを使用して、デリケートゾーンの皮膚はしっかり保湿しましょう。アトピー性皮膚炎の方は、全身の肌の状態がデリケートゾーンにも影響を及ぼします。デリケートゾーンだけでなく全身の保湿を心がけましょう。

食事

膣の中の良い菌(善玉菌)を増やす食事を心がけ、膣の外からの雑菌の繁殖を予防し、膣粘膜のバリア機能を高めましょう。膣の中の善玉菌は乳酸菌の一種です。この善玉菌を増やすために、食物繊維の多い食品、発酵食品、オリゴ糖などを上手に摂ることをおすすめします。辛いものなどの刺激物は、からだが温まってかゆみを増幅させてしまう危険性があります。炎症が強い状態の時は刺激物を避けましょう。

生活習慣

ストレスや睡眠不足は万病のもとといわれています。体を正常に働かせるだけでなく、皮膚や粘膜を若々しく保つためには、ストレスを溜めない、睡眠をしっかりとる、バランスの良い食事、といったすべての病気に関わる基本事項が、やっぱり大切なのです。

運動

40歳を超えると1年に1㎏ずつ筋肉量が減っていくといわれています。実は40歳以上の女性は多かれ少なかれ必ず尿漏れを経験するようになるのですが、それは骨盤底筋という内臓を支える筋肉が弱ってきているからです。特にデスクワークや運動習慣のない方は、少し気にして骨盤底筋運動(おうちで簡単にできるケーゲル体操、骨盤底筋ヨガ、座るだけで骨盤底筋が鍛えられる「エムセラ」という椅子型の高密度焦点電磁機器による治療など)をしてみてください。尿漏れ症状が強くなると、たいてい尿もれパッドを使用するようになりますが、尿もれパッドは通気性が悪く、長時間つけているとこすれてデリケートゾーンの皮膚が傷ついたり、むれて雑菌が繁殖して炎症が起こる、などからかゆみが生じる原因となります。

※デスクワークの時に太ももに国語辞典くらいの重さと厚さの本を落とさぬように挟むだけでも骨盤底筋が鍛えられますので、是非試してみてください!

デリケートゾーンのかゆみのQ&A

Q1:更年期に陰部のかゆみにおすすめの市販薬はありますか?またワセリンを使うのは効果的ですか?

A1:むれやただれによる炎症やかゆみに効く市販の軟膏・クリーム系から始めてみてはいかがでしょうか?多くは非ステロイド性ですので安心して使えます。炎症を抑える成分や、少しスース―して症状を緩和する成分などが入っているものもあります。
また、明らかにおりものが白くポロポロとして多い場合には、カンジダ膣外陰炎かもしれませんので、カンジダ膣外陰炎に聞く抗生物質の入った軟膏や膣坐剤をファーストチョイスにしても良いでしょう。
私は女性ホルモンの分泌の低下でかゆいのだと思う人は、女性ホルモンの入った軟膏も市販で売っていますので使ってみて下さい。ただし、エストロゲン関連腫瘍を持っている方、血栓症の既往のある方など、使用することのできない場合もありますので、使用上の注意をよくご確認ください。

Q2:市販薬で一時的におさまりますが、再度繰り返すかゆみを止める方法はありますか?

A2:まずは産婦人科を受診して相談してください。市販薬を使っていても、長期に症状を繰り返すことを放置しておくと、完治までの時間がかかってしまうことが多いです。
病院では原因を検索しながら治療を行います。原因が分かることで症状の再発や繰り返しの予防が可能になります。
また、女性ホルモンの分泌低下によるかゆみが繰り返されている場合には、保湿のセルフスキンケアをしてもらいながら、使用可能な方であれば女性ホルモンを補充しつつ、膣炭酸ガスレーザー照射「モナリザタッチ」を行って、根本的にデリケートゾーンのアンチエイジング治療を行う、という方法がおすすめです。

Q3:病院を受診した場合、陰部のかゆみはどの程度でおさまりますか?

原因が分かり、適切な治療を行えば、2週間以内にかゆみはおさまります。

まとめ

デリケートゾーンのかゆみといっても、年齢や環境で原因はさまざまです。

デリケートゾーンのかゆみはスピリチュアル(霊性的)な意味として、「デリケートゾーンは、第一チャクラという生命力のもととなる場所に、エネルギーが集中したために起こっている症状なので、やる気がみなぎっている状態、もしくは自信が付いてくる状態」や、「本能的な願望を抑えていることを意味している状態」と捉えて、人生を前向きに向かっていこう!という方も中にはいらっしゃるようです。が、、、。

私の経験上では、やっぱり「かゆいはつらい」、「かゆいは人生を不幸に」します。ぜひかゆみに日常のすべてがとらわれてしまわないうちに、病院を受診してください。

そして、かゆみの場所がデリケートゾーンであれば、悩まず最初に婦人科を選んでください。何度も言いますが、婦人科はデリケートゾーンの専門医です。きっとあなたの悩みを解決する手段がそこにはあります。女性ホルモンの分泌の低下が原因のかゆみであれば、なおさら、婦人科を頼ってください。

そしてかゆみから解放されて輝く朝を迎えられるように、一緒に頑張って治療していきましょう!!

仲 栄美子

仲 栄美子(なか・えみこ)
たかき医院 院長/日本産婦人科学会 専門医


女性の健康と心に寄り添うヘルスケアアドバイザーとして、日々診療にあたっています。
医師としての知見に加え、ヨガやメディカルアロマ、精油の知識を活かし、ライフステージごとに変化する女性の体と心をトータルにサポートしています。

取得資格・活動

  • ヨガインストラクター RYT200(サントーシマ香 師事)
  • 産後ヨガインストラクター
  • チェアヨガインストラクター
  • 骨盤底筋ヨガインストラクター(高尾美穂 師事)
  • MAA認定メディカルアロマプラクティショナー
  • MAA認定キャリアオイルマスター
  • MAA認定ホルモンアドバイザー
  • yuica認定 日本産精油インタープリター

著書

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