
今まで出会ってきた妊婦さんの話を思い出すと…
ひとによって
「妊娠してから全く妊娠中に夫と性行為をする気がありません」
という方と
「妊娠したら余計に性欲が出ました」
という方といます。
では産後はどうなのかというと、
「子育てが始まったら、夫とそういうことをする気が全くなくなった」
と答える方が多いです。
実際に2022年に厚生労働省がまとめた
「国民生活基礎調査」によると、日本の家庭の平均の子どもの人数は、最も多いのが、
「1人」49.3%
「2人」は38.0%
「3人以上」は12.7%
統計開始の1986年以降「2人」「3人以上」の減少幅が大きく、女性が1人出産した後に次の妊娠に向かう気持ちが減っていることが分かります。
しかしこれは果たして女性の性欲だけの話でしょうか。
年々夫婦共働きが増え、女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、夫の育休制度などが整備されてはいるものの、それも期間の限られていることであり、よほど理解があり協力する姿勢のあるパートナーでない限り、やはり家事育児を行う中心は現在も女性であるといえます。
協力する、と口では言っているものの、
子どもの保育園の送迎、
食事の支度、
お弁当の準備、
皿洗い、
そうじ、
洗濯、
買い物、
子どもの相手、
お風呂に入れる、
寝かしつけ、
学校の参観日の出席、
地域の活動への参加、
など、それらを行いながら自分も仕事をしなければならないとしたら、もう夜に布団に入った時には疲れ果てて夫の相手などする気持ちも起こらない、というだけでなく、夫の家事育児の協力を期待するだけ自分ががっかりするので夫のことは無視。
つまり夫への愛すら薄れていってしまう原因となり、性行為などはもってのほか、と感じるのは分からないことではありません。
実際、産後のセックスレスに関して2022年に行われた
ベビカムの「夫婦の性生活についてのアンケート」によれば、
回答者のうち半数以上が、
「出産後、全くない」
「年に数回程度」
と回答しており、
産後の性欲の変化については
50.41%の人が「変化がある」と回答。
ほぼ全員が「関心がなくなった」と答えています。
今回、夫婦生活の再開が遅れる、
もしくは無くなる理由として、
産後に子どものことに一生懸命で夫に関心が無くなる、
女性が忙しすぎて余裕がない、
だけでなく「産後の性交痛」も原因としてある、
という話をしていきたいと思います。
目次
産後の体に起こるホルモン変化とは
まず、産後の体に何が起こるのかを説明します。
妊娠を継続させるために分泌が増加し、妊娠後期には妊娠前の100倍もの量になっていた女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、出産が終わり胎盤が娩出されると急激に分泌が減少し、産後1週間にはほぼゼロに近い値になります。

このため、産後に
イライラしやすい、
疲れやすい、
不安感が生じる
といわれています。
いわゆるマタニティブルーを感じやすい時期です。
プロラクチンの増加
また、出産後に乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンが増え、赤ちゃんのための授乳が始まると、プロラクチンは女性ホルモンの分泌を抑えるため、排卵を抑制し月経が来ないようになる、あるいは月経が不安定になります。
そのためプロラクチンの値にもよりますが、
授乳中は女性ホルモンが「閉経に近い状態」になっています。
骨密度の減少
女性ホルモンが低い値であることと母乳を与えカルシウムを赤ちゃんに与えることで、授乳中の無月経の時期は母体にとっては骨密度の減少が著明になります。
女性ホルモンの分泌が自然回復するには数ヶ月〜1年かかることもあります。
産後によくある膣トラブル

産後、女性ホルモンの分泌が自然回復するまでの間、
デリケートゾーンの乾燥感やヒリヒリ感が生じることがあります。
今、産後は2週間後と1カ月後に産後健診といってお母さんの体調や赤ちゃんの状態をチェックする診療日がたいていあります。
産後2週間後のデリケートゾーンの変化
産後から2週間もすると、
産後すぐは会陰切開での痛みの症状が気になっていた人も、
かゆみやヒリヒリ感を訴える方が出てきます。
産後1ヶ月後のデリケートゾーンの変化
産後1カ月健診で診察していて感じるのは、
産後のお母さんの膣の入り口や膣の中が閉経後の人とそっくりだなということです。
膣や尿道の入り口や外陰部の皮膚が赤く荒れており、おりものが減っていて膣の中の粘膜が薄くなってしまう閉経後の萎縮性膣炎の状態です。
とすれば、同じようにパートナーとの性行為に痛みを感じるはずですし、今までと違うにおいが気になる人も出てくることでしょう。
産後の膣内環境について
女性ホルモンの分泌が低下し膣粘膜の乾燥や萎縮が起こると、膣内pHが変化し膣内を清浄に保つ乳酸桿菌が減少し、主に肛門周囲からの雑菌が膣内に入りやすくなります。
そのため、細菌性膣炎や細菌性膣症が生じおりものの性状やにおいが変化することもあります。
治療が必要な細菌性膣炎や膣症
細菌感染が生じた状態は自然と治ることはほぼないため、治療が必要になります。
母乳と月経の関係
完全母乳で授乳をしている人でも産後3ヶ月くらいで月経が再開する人もいれば、母乳を続けている限り何年も月経が再開しない人もいます。
これは乳汁分泌ホルモンが出ている量が個人個人で違うためですが、月経が来ないということは女性ホルモンの分泌が抑制されているということなので、産後の膣トラブルが慢性化してしまうリスクが高くなります。
慢性化すると、
・かゆみやヒリヒリ感が常にある、
・性交痛で夫婦生活から遠のいてしまいパートナーとの関係が悪くなる、
・雑菌が繁殖しやすい状態になり細菌性膣炎や細菌性膣症でおりものが多くなる、
・においが気になる、
・かゆみが出る、
・膀胱炎を繰り返す
などが起こる可能性があります。
自宅でできるケア方法

産後に女性ホルモンの分泌が自然回復するまでの間、自宅で出来るケアについてお話します。
保湿剤
近年、フェムケア(女性のためのケア)用品がさまざま出回っており、その中にデリケートゾーンの保湿をする製品もあります。
選ぶ際には皮膚や膣内のpHは弱酸性であるため、弱酸性の製品であることを大前提としてください。
たかき医院では同じ産婦人科医で私の大学先輩でもある海老根真由美先生が開発されたエビネシリーズをおすすめしています。
どの商品も女性として産婦人科医として妥協を許さない製品開発がされており、一度使うとリピしてしまうものばかりです。
ちょっとお財布が厳しいな~という方は、市販のワセリンで構いません。
入浴後と朝起きたときにデリケートゾーン全体に塗布することで外部からの刺激から保護されます。
潤滑剤の使用
性交痛を和らげるためには潤滑剤を使用することをおすすめします。
産婦人科医が開発に携わっている潤滑剤、日本家族計画協会のリューブゼリーをおすすめします。
1982年に日本初の水溶性ゼリーとして発売されて以来長年使用されている商品です。
骨盤底筋トレーニングで血流促進
女性ホルモンの分泌が低下している時は骨盤内の血流も減少しており、そのため膣分泌物(おりもの)が少なくなり乾燥するということにつながります。
この骨盤内の血流を増やすため、また妊娠中に始まる尿漏れを解消するために、骨盤底筋トレーニングを産後に行うことをおすすめします。
特に産後の尿漏れは産後1年以内に解消しないと、その後長期にわたって症状が続くため早めにケアすることが重要です。
参考記事 産後のケア方法を詳しく解説しています
通気性・清潔な環境を保つ
女性ホルモンの分泌が低下し膣粘膜の乾燥や萎縮が起こると、膣内pHが変化し膣内を清浄に保つ乳酸桿菌が減少し、主に肛門周囲からの雑菌が膣内に入りやすくなるため、悪露が出ている時はこまめにナプキンやおりものシートを交換し雑菌の繁殖を予防しましょう。
会陰切開の傷が痛いばかりに十分にデリケートゾーンの汚れを落とせていない人を良く見かけます。傷から離れた小陰唇の裏に垢がたまりやすいので泡で優しくなで洗いをしてください。
あとは、雑菌の繁殖予防かつデリケートゾーンの皮膚を傷めないように、なるべく通気性がよく肌当たりの良い生理用品や下着を使用しましょう。

産後の骨盤底筋トレーニングはいつから?
産後の骨盤底筋トレーニングは実はお産の翌日からできるんです。
ベッドにあおむけに横たわって頑張ったご自分をほめたたえながら、ゆったりとした気分で腹式呼吸をしてみてください。
疲れた自分の体の癒し、そして傷んだ骨盤底筋のリカバリーの第一歩になりますよ。
それでも治らない場合の医療的治療

自宅でケアをしていてもなかなか症状が改善しない時には、産婦人科に相談に行ってみましょう!
ホルモン補充療法
膣内に女性ホルモンであるエストロゲンの膣錠を挿入して局所的にエストロゲンを補充する治療法です。
母乳を出している授乳中はエストロゲン製剤の内服は、母乳への移行が懸念されること、母乳の出が悪くなる、産後21日間は血栓症のリスクが高くなるため内服は控えた方が無難です。
それに比べて膣剤は使いやすい製剤です。
しかし、局所的な膣剤であっても寝たきりに近い状態、分娩時に輸血をした、BMIが30以上の肥満のある人、帝王切開後、妊娠高血圧症候群、たばこを吸っている、などの人は血栓症のリスクがゼロではないので、使用には注意が必要です。
膣レーザー治療(モナリザタッチ)

炭酸ガスレーザー照射を膣内や外陰部に行うことで、自然治癒力を利用して薄くなってしまった粘膜や皮膚のコラーゲンの再生を促し、若々しい膣粘膜や外陰部の皮膚を作り出す治療法です。
女性ホルモン剤を使用しないので
産後授乳中の方やどんな状態の人でも受けられる、
粘膜や皮膚の構造上のアンチエイジング(若返り)、
を期待することができます。
モナリザタッチの効果
個人差はありますが効果は早く、1~2カ月の頻度で2~3回受けていただくと症状改善の実感ができます。たった1回でも治療から数日で効果が出るのを実感する方もいます。会陰切開の傷がしっかり治った産後1カ月ごろからの治療開始になります。唯一欠点としては、自由診療のため治療費が高額なことが多いです。治療を行っている病院が限られており、自宅近くに無い場合もあります。
骨盤底筋治療

骨盤底筋運動をすることで骨盤内の血流を良くすることが大事ですが、
なかなか自分ではうまくできない、
続かない、
面倒くさい、
このような人には
エムセラという椅子型の骨盤底筋治療をおすすめします。
2020年に発売された治療器で、座るだけで骨盤底筋が鍛えられます。同様の治療器の中で唯一国内承認機器のため、自費診療で治療費は高額ですが、医師が必要と判断し治療を受けた場合には、確定申告の時に医療費として申告することができます。
HIFEM(高密度焦点式電磁)の働きで、
なかなか刺激できない体の深部の骨盤底筋に1回の治療で1万7400回電磁刺激をすることができ、本来の骨盤底筋の位置の感覚や収縮の感覚を呼び起こすことにより、骨盤内の血流を増やし、たるんだ骨盤底筋を鍛えて元に戻していく治療になります。
椅子の座面から15cmほど刺激が入るために他のインナーマッスルも鍛えられ、
腰痛緩和やヒップアップ、妊娠・出産をきっかけに性的な快感が弱くなってしまった方にもおすすめです。
よくある質問(Q&A)

授乳が終われば自然に治る?
出産後は、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンが増え赤ちゃんのための授乳が始まります。
プロラクチンは女性ホルモンの分泌を抑えるため、排卵を抑制し月経が来ない様になる、あるいは月経が不安定になります。プロラクチンの値にもよりますが、授乳中は女性ホルモンが「閉経に近い状態」になっています。
授乳が終わると自然にプロラクチンが低下し女性ホルモンの分泌が増え、性交痛も緩和されていくのが一般的です。
産後の性交痛はいつまで続く?
授乳中のプロラクチンの値にもよりますが、低下した女性ホルモンの分泌が自然に回復するには数か月~1年はかかるといわれています。そのため、性交痛も同様の期間で改善されていくと考えられます。
市販の保湿剤でも大丈夫?
産後月経が再開するまでのデリケートゾーンの乾燥・かゆみ・ヒリヒリ感に対して、市販のデリケートゾーン用のフェムケア商品で保湿をすることをまずはおすすめします。
選ぶ際には皮膚や膣内のpHは弱酸性であるため、弱酸性の製品であることにご注意ください。
産婦人科医の海老根真由美先生が開発されたエビネシリーズをおすすめします。
お手軽にすぐに始めたい方は、市販のワセリンを入浴後と朝起きたときにデリケートゾーン全体に塗布することで外部からの刺激から保護してみましょう。
モナリザタッチは授乳中でも受けられる?
炭酸ガスレーザー照射を膣内や外陰部に行うことで、自然治癒力を利用して、薄くなってしまった粘膜や皮膚のコラーゲンの再生を促し、若々しい膣粘膜や外陰部の皮膚を作り出す治療法です。
女性ホルモン剤を使用しないので産後授乳中の方やどんな状態の人でも受けられ、粘膜や皮膚の構造上のアンチエイジング(若返り)を期待することができます。
会陰切開の傷がしっかり治った産後1カ月ごろからの治療開始になります。
施術は痛い? ダウンタイムは?
モナリザタッチの施術は麻酔クリームを使用して行いますので、ほぼお痛みなく行うことができます。顔のレーザー治療と違ってダウンタイムもありません。
何回くらいで効果が出る?
個人差はありますが効果は早く、1~2カ月の頻度で2~3回受けていただくと症状改善の実感ができます。たった1回でも治療から数日で効果が出るのを実感する人もいます。
まとめ

産後のデリケートゾーンの乾燥・ヒリヒリ感、その先の性交痛は母乳を出すための母体の体の変化であり、女性ホルモンの分泌抑制が原因です。これは必ずだれにでも起こる変化です。
そして、産後数日から起こり、産後6カ月で子どもの離乳食が始まって自然と母乳の回数が減っていくなら、1年以内には女性ホルモンの分泌は自然回復します。
しかし、完全母乳で、離乳食が始まっても母乳を与え続けるなら、さらに女性ホルモンの自然回復が遅くなる人もいるでしょう。
最近は男性が育休を取得できる職場も増え女性の育児の負担も少なくなってはいるかもしれませんが、やはりワンオペの方も多い中、育児の疲労がつのるだけでなく、産後はデリケートゾーンの変化も生じるため、女性にとっては夫婦生活が遠のきがちです。
生活に少し余裕が出来てきて、女性が夫婦生活を希望した時に性交痛があってできない、というのはご夫婦にとってとても切ないことです。
産後の乾燥・ヒリヒリ感、そして性交痛はだれにでも起こるもの。
だからこそ放置せず、気になる時は早めに婦人科で相談をしてください。
モナリザタッチについて
たとえ母乳をしっかり出している授乳中であっても、モナリザタッチというレーザー治療があります。
モナリザタッチはホルモン補充療法のようなリスクもなく、痛みもなく、受けた後のダウンタイムも無く、施術は1カ月に1回30分という短時間での施術のため、いつでも気軽に受けられる産後の性交痛の安全な選択肢としてぜひ知っていていただきたいと思います。
新潟県のたかき医院について

女性の身体と心の健康は、日々の生活を豊かにする上で非常に重要です。
たかき医院では、一人ひとりの患者様が安心して、そして前向きに健康と向き合えるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。十日町市にお住まいの方だけでなく、アクセスしやすい津南町、南魚沼市、湯沢町からはもちろん、県内、県外(お近くの長野県)からのご来院も心よりお待ちしております。
どんな些細なことでも構いません。ご自身の身体に気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。専門の女性医師とスタッフが、親身になってお話を伺い、最適な治療プランをご提案いたします。
デリケートゾーンのお悩みは、たかき医院まで
デリケートゾーンの乾燥や違和感にお悩みの方へ
「尿もれ」「陰部の出血」
「膣の乾燥」「萎縮性膣炎」
「陰部ヒリヒリ」
「性交痛」など
ホルモンを使わず粘膜を若返らせる
モナリザタッチ治療で改善が期待できます。
当院では、女性医師による
丁寧なカウンセリングと
個室対応で安心してご相談いただけます。
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皆様の健康と笑顔のために、たかき医院が全力でサポートさせていただきます
