子宮頸管ポリープとは？検診で指摘されたときの原因・がんとの違い・治療法を婦人科医が解説！

「こ、こ、こんなものが届きました、、、」

と、恐る恐る住民健診の結果の紙を差し出す現場に比較的出会います。

そこに書いてあるのは、

「子宮頸がん検診の結果は
『子宮頸管ポリープ』です。
結果の用紙を持って病院を受診してください。」

つまり、恐る恐る紙を差し出しているというのはなぜかというと、差し出している本人が『子宮頸管ポリープ』という結果を「悪い物（＝がん？）」と思っているからです。

しかし、結論から申しますと、この紙を持ってきた方は、その数分後にはニッコニコで帰っていきますので、心配せずこの先を読み進めてみてくださいね！

子宮頸管ポリープとは？｜まず知っておきたい基本情報

・そもそも「ポリープ」とは何？語源と医学的な意味

普通に毎日使っている「ポリープ」って一体何語なんだろう？

どこからやってきたの？

と思ったので、ちょっと調べてみました。

病理学的にはポリープ（Polyp）は、

粘膜（上皮細胞）に覆われた管状の臓器に発生する隆起性病変の総称

と説明されていました。

なるほど！

とこの説明を読んで私が思ったのは、患者様には

「良性のイボですよ、取ってしまえばそれで治ります。」

と説明していましたが、「イボ」といっても、体にできるイボがすべてポリープとは呼ばれていませんよね。

子宮頸管ポリープ以外のものとしては、

「声帯ポリープ」
「胃ポリープ」
「大腸ポリープ」などを

よく耳にされると思いますが、すべて管状の臓器の粘膜に飛び出た病変です。

・子宮頸管ポリープの特徴とがんとの違い

そして、実は「ポリープ」は病名ではなく、きのこ状やいぼ状、ほぼ平らなど粘膜が盛り上がった状態を指しているのだそうです。

もともと「Polyp」はギリシア語の「Polupous（多くの足）」から来ている、ということを知ると、尚更なるほどと思うのです。

子宮の膣につながる部分を子宮頸部といい、子宮頸部は産道になるため管状になっています。

ですので、子宮頸部という管状の臓器にできる粘膜の隆起を子宮頸管ポリープといいます。

粘膜の形がきのこ状やいぼ状、平らなどになっているだけなので、見つけてすぐに切除してしまえば悪性になることはありません。

子宮頸がんは、できる場所は子宮頸管ポリープと同じです。

ただし、上皮内がんというごく粘膜の表面にできた子宮頸がん自体が、きのこ状やいぼ状になっていることはまずありません。

・子宮頸管ポリープが見つかるタイミングと症状

子宮頸管ポリープが発見されやすいタイミングとしては、

便秘を解消するために長時間トイレで踏ん張った

（骨盤に血液がうっ血するような状態があったら）出血したので婦人科受診をした

性行為中や性行為後に出血があったので婦人科受診をした

無症状で婦人科検診や妊婦健診などで医師に「できてますよ～」と偶然指摘される、などがありますが、ほとんどの方は無症状です。

びっくりするほど大量に出血をしたり、冷や汗が出るほどお腹が痛くなる、熱が出る、などの激しい症状はまずありません。

原因と症状｜なぜできる？どんな症状が出る？

なぜできる？原因って何？

子宮頸管ポリープができる原因というのは「これ！」というものは分かっていません。

ただ、子宮頸部は膣を通じて体の外と繋がっている部分のため、子宮頸部に慢性的な炎症が起こるとできる、といわれています。

慢性炎症の原因は？

慢性的な炎症は、クラミジアや淋菌感染などの性感染症だけでなく、大腸菌などどんな菌でも感染し慢性的な炎症につながりますので、常に陰部は清潔を保つこと、トイレでの陰部の拭き方などには注意をしたいものです。

そして、ストレスを多く感じる方は体内に慢性的な炎症状態を起こすといわれていますので、上手にストレス解消をしていきましょう。

フェムケアでデリケートゾーンケア！

頸管ポリープを予防するためには、一つ陰部を清潔に保って慢性炎症が起こらないようにする、ということも必要です。今大きなブームになっている「フェムケア」をご存じですか？

もしもフェムケアって何？デリケートゾーンケアってどうやるの？と思われた方はこちらのコラムもぜひ読んでいてくださいね。ただし、洗いすぎはかえってデリケートゾーンを痛めてしまうので注意してください。

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妊娠中の子宮頸管ポリープ

また、妊娠中に１カ月という短期間でもかなり大きな子宮頸管ポリープが急にできることがありますので、大量に分泌される女性ホルモンの大きな影響がありそうです。

更年期の子宮頸管ポリープ

更年期世代も子宮頸管ポリープが見つかりやすい世代ですので、エストロゲン（卵胞ホルモン）やプロゲステロン（黄体ホルモン）のバランスの乱れにも原因がある可能性があります。

最後に、これは非科学的な話なので軽く聞き流していただけたらと思いますが、スピリチュアル的には、ストレスを誰にも伝えず一人心の中に抱えたままでいると、それが目に見える形に腫瘤（コブ）化するということです。

特に女性は子宮にできるようですのでお気を付けくださいませ。

子宮頸管ポリープの症状は「無症状」と「不正出血」

子宮頸管ポリープの2大症状は「無症状」と「不正出血」だと思います。

子宮頸管ポリープが一番できる年代は30～50代です。

無症状の子宮頸管ポリープ

「無症状」の状況で一番多いのは、

住民健診・会社の健診・人間ドックなどで子宮頸がんの定期検診を受けた方が、何も症状がないのに「子宮頸管ポリープが出来ているので病院を受診してください」と書かれた用紙をドキドキして持ってこられるパターンです。

不正出血の子宮頸管ポリープ

「不正出血」で見つかるパターンは、月経でもないのにたびたび少量の出血がみられる、性行為の最中や性交後に出血をした、等が多いように思います。

子宮頸管ポリープの大きさや数は？

子宮頸管ポリープは、米粒よりも小さなものからブドウのデラウェア１粒くらい大きなもの、一つだけのこともあったり２～３個同時にできていたりしますが、大きさや個数ではあまり症状の違いはありません。

大きくても無症状だったり、小さいのに不正出血が起きたりします。

検査・診断方法｜どうやって見つかる？

症状の有る無しに関わらず、内診台での診察が必要です。

約７～９cmの長さのある膣の奥にある子宮頸部を診るためにクスコ鏡という金属でできた診療器具でそっと膣を開いて奥を覗きます。

肉眼でポリープの大きさ、形、個数などを把握します。

場合によっては経腟超音波検査を併用して、頸部のどのあたりからポリープが出来始めているのかを確認することもあります。小さく形が平たいものでは無く雫状にぶら下がっているようなポリープは診察と同時に麻酔せずにお痛みもなくその場で取ることができます。

大きい、平たい、少し頸管の奥の方からできている、月経のある若い人、妊娠中の人は切除の時に出血が多くなってしまうこともあるので、無理に外来中に取らずに日を改めて手術日を決めて止血できる器械などを揃えた状態で行うこともあります。

その場合も特にお痛みなくとることができます。
取ったものは悪い細胞が含まれていないか必ず病理検査に出させていただきます。

子宮頸がんの定期検診で子宮頸管ポリープも同時に検査

また、子宮頸部細胞診（＝子宮頸がんの定期検診）は子宮頸管ポリープがあっても同時に検査が可能です。

子宮頸管ポリープは無症状のことも多いので、妊婦健診、住民健診、会社の健診、人間ドックなどで偶然見つかることも多いです。

びっくりされずに落ち着いて産婦人科医にご相談いただき、対応してもらってくださいね。

【治療法】自然に治る？切除は必要？

子宮頸管ポリープの治療（切除）の流れと痛み・出血について

子宮頸管ポリープは、内診台で診察して大きさや性状を確認しながらその場で取ってしまうことがほとんどです。

麻酔の必要はまずありません。

ほとんどの人が

「エッ！？今もう取れちゃったんですか？全然分からなかった！」

と言います。

イメージで言うならば、ブドウの粒を房からぷつんと取るような感じです。

ただし、どうしても粘膜の一部を（表現は悪いですが）むしり取ることになるので、多少の出血が取る時には起こります。たいていは取ってもかすり傷程度なので、何もしなくても出血は止まります。

中に少しガーゼや綿球などで出血部を圧迫して出血を止めたり、電気メスといったもので出血している血管を焼いて止血したりすることもあります。

ですので、子宮頸管ポリープを取ったと同時に止血もするので、帰宅してから大量に出血してびっくりしてご連絡を頂くということはありません。

あっても、「２～３日おりものに少し出血が混じるくらいで大丈夫でしたよ」というくらいです。

子宮頸管ポリープ切除後の過ごし方と注意点

・当日の過ごし方は？

子宮頸管ポリープを取った部分は、簡単に言えばけがをして後にかさぶたになっている状態と考えてもらったらよいので、湯船につかる入浴は膣の中にお湯が入ってかさぶたがふやけて取れてしまい、出血の原因になる可能性があるので、当日は控えた方が無難です。

・性交渉はいつからできる？

性行為は、どうしてもペニスの挿入でかさぶた部分をこすってしまう可能性があるので、やはり当日は控えた方が無難です。

そして性行為は直接患部をこする可能性があるため、再出血が心配な方は治療後１週間は性行為を控えていただければ十分と思います。

・運動はいつからできる？

運動は、行えば全身の血行が良くなります。
骨盤内の血行も良くなる上に、運動の種類によっては骨盤内にうっ血を起こしてしまうことがあります。うっ血が起こるとかさぶたがはがれやすい状態になるので、やはり走り回ったり重いものを持ちあげたりするような運動は、子宮頸管ポリープを取った当日は控えた方が無難です。

切除後は医師の指示に従い安静に！

まれに子宮頸管ポリープを取った時の出血が多かったり、その止血に少し時間がかかるようなことがあります。

その時は、主治医から「〇日は入浴や性行為や激しい運動などは控えて安静にしていてください」と指示があると思いますので、それに従ってください。

ポリープ切除後は多少の出血はどうしても起こってしまいますが、痛みを感じるということは無いですので、ご安心ください。

子宮頸管ポリープは良性だけど再発しやすい？予防と上手な付き合い方

子宮頸管ポリープは100％「良性」です。

なぜなら、本来ある子宮頸部の自分の粘膜の形が一部変形してしまっただけだからです。

ただ、子宮頸管ポリープを含めて「良性」というものは、再発の可能性が比較的あるものだと思ってください。

例えていうなら、ニキビは良性の皮膚炎の一種ですよね？

でも、治療をして一回で治るというよりはある程度繰り返すというのが普通です。肛門にできる痔も、良性ですが、残念ながら何回か繰り返す方が多いというのと同じです。良性のものは繰り返しできやすい、でも所詮は「良性」と思ってあまり考えすぎないようにしましょう！

予防法は、「これ！」というものはありませんが、これまでに書いたものを復習するなら、

・慢性的な炎症が起こる状態を避ける
・つまり陰部は常に清潔に保つ
・そしてストレスをためない

といったところかもしれませんね。

とはいえ、「今年の住民健診でもまたできてるって言われました～」と笑いながら健診のごとにいらっしゃる方もいますが、何が再発の原因かははっきりしないことが多いです。

妊娠・性行為への影響は？気になる疑問を女性医師が解説

妊娠中に子宮頸管ポリープが見つかったときの対処法

数週間前には無かった頸管ポリープが急にできて大きくなることが妊娠中にはあります。

頸管部分から出る粘液の分泌が増えるから、赤ちゃんを育てるために骨盤内の血流が増えるため、妊娠して女性ホルモンの分泌が増えたため、などいろいろ原因はいわれています。

大きさも米粒大からブドウのデラウェア１粒くらいの大きさまで様々です。 頸管ポリープのために出血をたびたび起こすことは細菌感染のリスクを上げ、細菌感染が生じると流産や早産の原因にもなることから、医師の判断で必要時には妊娠中でも切除手術を行うことがあります。

ただし、手術は外来の内診台で麻酔もいらずに痛みもなく短時間で切除するものなので、ご心配には及びません。

子宮頸管ポリープは不妊の原因になる？

頸管ポリープがあったからといって必ず不妊になるようなことはありません。

子宮頸管ポリープがあるために細菌感染を引き起こしているようであれば、妊娠するための子宮や膣の環境に影響がある可能性があるため、すぐに切除します。

また前述のように、頸管ポリープを持ちながら妊娠が始まったときに、頸管ポリープへの細菌感染で流産や早産のリスクが高まりますので、妊娠前に見つかった頸管ポリープは切除しておくのが無難です。

性交時の違和感・出血と子宮頸管ポリープの関係

頸管ポリープ自体は大変柔らかいものであるため、持っている本人側としては出来ていることに気づきません。

性行為を行う際に物理的な刺激でポリープから出血する、頸管ポリープに炎症が起こるとおりものが増えたりにおいの原因になります。

炎症が高度になれば子宮頸部に炎症が波及して、性交痛を引き起こすこともあるかもしれません。

子宮頸管ポリープ切除後、性行為を再開してよいタイミング

膣内はもともと膣分泌物で常に湿った状態になっています。

ポリープ切除術を行った後は傷口を安静に保たないと、膣分泌物で切除した後のかさぶたが取れてしまうこともあり、再出血の原因となります。

１週間は性行為を控えていただいた方が無難です。

子宮頸管ポリープはがん化する？放置してはいけない理由

子宮頸がんとの見分け方と病理検査の役割

子宮頸管ポリープは出来ていることをご本人様が気づいていないことが多いです。そのため、定期的な子宮頸がん検診で一緒に子宮頸管ポリープが出来ていないかを医師に確かめてもらう必要があります。

子宮頸管ポリープが見つかったら切除をした後に、必ず医師が病理検査といって切除したものが良性か悪性かを調べる検査をします。

その検査結果をもって、最終的に子宮頸がんか頸管ポリープかを診断することになります。

良性でも放置はNG？炎症・出血など悪化リスク

子宮頸管ポリープは本来、良性の疾患です。

ただし、体にできる腫瘍は見ただけでは100％良性か悪性かは判断がつきません。腫瘍を切除し病理検査をしないと良性か悪性かは判断がつかないのです。

まれですが、切除した頸管ポリープの一部に子宮頸がんの前がん病変である異形成の状態が病理検査の結果で見つかることがあります。

がんができる原因も慢性炎症！

良性だからと放置し続けるのは100％安全とは言い切れません。

慢性的な炎症で頸管ポリープができると言いましたが、がんができる原因も慢性炎症だからです。

また、子宮頸管ポリープは不正性器出血の原因になり、出血のために細菌感染が生じ炎症につながっていくことで、おりものの量が増えたり匂いの原因になることがあります。

切除をおすすめします！

また、炎症が高度になれば子宮頸部に炎症が波及して、性交痛を引き起こすこともあるかもしれません。 頸管ポリープの手術はただ一つ、ポリープを切除するという手術のみになりますが、手術は外来の内診台で麻酔もいらずに痛みもなく短時間で切除でき、生命保険で手術費用が出るものもあります。

医師と相談し、ためらわずに切除をすることをおすすめします。

将来のリスクを減らすための定期検診の重要性

子宮頸がんの定期検診は、子宮頸がんを早期発見早期治療するのが一番の目的ですが、頸管ポリープを含め、がん以外の子宮や卵巣の疾患を発見する目的でも非常に有用です。

是非、出血や腹痛などの自覚症状が無くても、定期的な検診を受けていただくことで、放置したことで将来の自分に降りかかる子宮や卵巣疾患での不幸を回避して欲しいと思います。

子宮頸管ポリープに関するQ＆A

Q. 子宮頸管ポリープは自然に治ることもありますか？

A．子宮頸管ポリープは非常にもろい組織で出来ています。

ちょっとした性行為などでの物理的刺激や女性ホルモンのバランスの変化や骨盤内の血流の変化などで、自然と取れて治ることもあります。

Q. 放置していたらどうなりますか？

A．放置していて何も起こらない場合もありますが、不正性器出血の原因になり、出血のために細菌感染が生じ炎症につながっていくことで、おりものの量が増えたり匂いの原因になることがあります。

また、炎症が高度になれば子宮頸部に炎症が波及して、性交痛を引き起こすこともあるかもしれません。また、まれですが頸管ポリープに子宮頸がんの発生が生じることもあります。

Q. 痛みはありますか？

A．よほど頸管ポリープに強い炎症が起きない限りは痛みの自覚症状は出ません。

Q. 治療後、再発することは？

A．頸管ポリープは良性の腫瘍です。

首にできるイボのように、人によってはたびたび再発することがあります。

Q. 妊娠中ですが、治療は可能ですか？

A．妊娠中でも治療は可能です。

ただし、妊娠中の切除は赤ちゃんを育てるために骨盤内の血流が増えていることで切除に伴い大量に出血することもあります。治療のタイミングは医師の判断の上で行うようにしてください。

Q. がんと関係ありますか？

A．まれではありますが、頸管ポリープの表面に発がん性ヒトパピローマウィルスが長年感染をし続けることで子宮頸がんを発生することがあります。

妊娠中でない時に見つかった場合には、早めに医師に切除してもらうことをおすすめします。

【まとめ】「早めに見つけて、さっと治す」疾患

子宮頸管ポリープは外来診療で頻繁に目にする疾患です。

自覚症状が出ないこともあるので、これを読んでいる皆さんにももしかしたらいつの間にかひっそり出来ているかもしれません。もしも知らないうちにできた頸管ポリープに運が悪いことにがんが発生したら、どうしますか？

皆さんの多くの方は、車のメンテナンスは車の整備工場などにお願いをすることと思います。それは、不調を放置したことで大きな事故が起こらないために、定期的に自分では確認のできない部分を専門家にお願いしてチェックしてもらっているということだと思います。

私たちの体も同じです。

定期検診の重要性！

自分では確認できないところのチェックは、ぜひそれぞれの専門家に確認してもらうと良いでしょう。

頸管ポリープは子宮頸がんの定期検診で一緒に確認することができます。

決して痛い検査は必要ありません。定期検診で見つかっても、驚かずにすぐに婦人科を受診していただければ、はじめにお話したように、あっという間にニッコニコで帰宅することができます。

小さな不調が大きな災いにならないためにも、日ごろからのメンテナンスをおすすめします。そして子宮頸管ポリープのチェックや治療は、婦人科にお気軽にご相談くださいね！

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