
外来で診察をしていると、デリケートゾーンの「痛み」についてのご相談をいただくことが本当に増えました。
中でも、
「ヒリヒリ」
「ピリピリ」
「焼けつくような灼熱感」
といった症状は、患者様が日中だけでなく夜も眠れなくなるほど悩まれるケースも少なくありません。
「下着が触れるだけでも痛いんです」
「何もしなくても、常にジンジンして、まるで陰部に心臓があるみたいです…」
そんなふうにおっしゃる方は、これまで本当に一人で長く耐えてこられたのだな、と胸が痛みます。
でも、安心してくださいね。
デリケートゾーンのピリピリや灼熱感には、「原因」があります。
そして、原因が分かれば、今のつらい症状から解放されるための「治療法」が必ずあります。
今日は、見えないところで起きているデリケートゾーンのトラブルについて、専門家として分かりやすくお話ししていきますね。
目次
外陰部がピリピリ・ジンジン・灼熱感……何が起こっている?

痛みの種類(ヒリヒリ/ピリピリ/灼熱感)
患者様から伺う痛みの表現は本当に多彩です。「ヒリヒリ」は、軽い刺激でも敏感に反応してしまう状態。
「ピリピリ」は、神経が過敏になって電気が走るような感覚。
「灼熱感」は、まるで日焼けをした後のように、肌が常に火照って焼けつくような感覚です。
特に、何もしなくても常に痛みがある、あるいは下着が触れるというごくわずかな刺激でも「ビリッ!」と強い痛みを感じる場合、それは神経が異常に過敏になっているサインかもしれません。
粘膜が薄くなると神経が敏感に
デリケートゾーンの皮膚や粘膜は、顔の皮膚よりもさらに薄く、本来とても繊細な場所です。
しかし、ホルモンバランスの乱れなどで皮膚のバリア機能が低下すると、乾燥が進んで角層がめくれ上がり、外部からの刺激をブロックできなくなります。
こうなると、皮膚の表面のすぐ下の真皮層にある「痛みの神経」が剥き出しの状態になり、通常なら感じないはずの空気の刺激や服の摩擦まで「ピリピリ」「灼熱感」として脳に伝わってしまうのです。
更年期以降に多い理由
このトラブルが更年期以降の女性に特に多いのは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が大きく関わっています。
エストロゲンが減ると、水分量を維持するコラーゲンが減り、デリケートゾーンの潤いを保つ力が激減し、粘膜は薄く、乾燥しやすくなります。
この「乾燥」が引き金となり、神経の過敏状態へとつながってしまうのです。
ピリピリ・灼熱感の主な原因5つ(鑑別)
同じ「ピリピリ」でも、実は原因によって治療法が異なります。代表的な原因を5つにまとめました。
1.陰部神経痛(pudendal neuralgia)
骨盤内を通る陰部神経が圧迫や刺激を受けて起こります。座っていると悪化し、立ったほうが楽になることが多いのが特徴です。
自転車への長時間の乗車、固いところに長時間座っていた、出産や骨盤周辺の手術、筋肉の異常な緊張、腰椎・股関節・骨盤のゆがみ等からくる二次的な神経圧迫が原因になることがあります。
2.前庭部痛症(vestibulodynia)
腟の入り口(前庭部)に慢性的な炎症や神経過敏が起こる状態です。挿入時の入口痛が強く、触れるだけで強い灼熱感を感じます。
過去の細菌性腟症などによる炎症や摩擦などの刺激が繰り返されることで神経が異常に過敏になって定着してしまっている、ホルモンバランスの変化による皮膚や粘膜の乾燥・菲薄化(薄くなってしまっている状態)、痛みへの不安で骨盤底筋などに常に力が入ってしまい血行が悪くなっている、など複数の要因が絡み合って起こっていると考えられています。
3.萎縮性腟炎(GSMの一つ)
更年期以降のエストロゲン低下による外陰部の皮膚や腟粘膜の乾燥・萎縮です。
GSMは「閉経関連泌尿生殖器症候群」という医学用語で、ヒリつき、におい、かゆみ、ゆるみ、痛みなどの生殖器の症状や、頻尿・尿もれなどの泌尿器の症状まで様々なものが含まれます。
4.接触皮膚炎・アレルギー
おりものシート、ナプキン、下着、洗剤などが主な原因です。
「新しいものを使い始めてから痛い」ならコレが疑われます。
5.カンジダ・細菌性腟症などの感染症
強いかゆみやおりものの変化があれば感染のサイン。
放置すると皮膚炎が悪化し、痛みにつながります。
感染や炎症を繰り返す方へ
受診が必要な危険なサインは?

自己判断で我慢しすぎないでください!
以下の場合は、早めに産婦人科へ相談しましょう。
強い灼熱感が夜間も続く
睡眠障害は自律神経をさらに乱し、治りを遅くします。
排尿痛・血尿がある
膀胱炎の可能性があります。GSMが原因で膀胱炎を繰り返している場合もあります。
性交後に鮮血が出る
閉経後の出血は、「異常」ととらえる心構えが必要です。萎縮性腟炎でも出血はありますし、子宮頸管ポリープのような良性の腫瘍から子宮頸がん・子宮体がんなどの悪性の腫瘍でも出血があるため、しっかり診察を受ける必要があります。
触れていないのに痛い「アロディニア」
衣服・冷たい水やぬるいお湯・場合によっては空気が触れただけでも激痛が走る状態。これは神経が相当過敏になっています。
治療法(原因別)

原因が分かれば、それぞれに合った治療法があります。
1.陰部神経痛
神経ブロック注射や骨盤底筋のリハビリテーションを行い、神経の鎮静を図ります。
2.前庭部痛症
局所エストロゲン治療、保湿、そしてレーザー治療などで粘膜の質を改善します。痛みから注意をそらす治療(マインドフルネス、向精神薬の投与など)も必要になるかもしれません。
3.GSM
局所及び全身のホルモン補充療法を行います。
また、モナリザタッチ(炭酸ガスレーザー照射治療)による粘膜の再生治療が非常に有効です。

腟内環境を根本から若返らせるため、再発を防ぎやすいのが特徴です。
4.皮膚炎
原因物質を除去し、炎症を抑える軟膏を使用します。
5.感染症
抗真菌薬や抗生剤で菌を徹底的に除去します。
※尿もれも気になる方は、椅子に座るだけの骨盤底筋治療「エムセラ」を併用すると、さらに効果的です。

エムセラは骨盤内の血流改善にも役立つため、①②③の治療としても良いでしょう。
日常生活で悪化させないための対策

まずは今日から、デリケートゾーンを「守る」ケアを始めましょう!
締め付け・自転車・座りすぎの注意
ぴったりしたガードルやスキニージーンズは避け、通気性の良い綿や絹の下着を選びましょう。
自転車や硬い椅子での長時間の作業は神経を圧迫します。座布団を敷くなどの工夫を。
石鹸を使いすぎない
デリケートゾーンの皮膚は非常に薄いです。
洗浄剤は弱酸性のものを選び、小陰唇と大陰唇の間の汚れがたまりやすいところのみを、泡で優しく指でなで洗うだけで十分です。
泡を流すお湯は熱すぎると皮脂が落ち、余計に乾燥の原因になるので注意しましょう。ウォシュレットはお休みするなど、洗いすぎには注意です。
ナプキン・パッドの蒸れ対策
尿漏れパッドやナプキンを長時間つけていると、蒸れが炎症を悪化させます。汚れがついていなくても3時間くらいしたら、こまめに取り替えることが鉄則です。
セルフケアについて詳しく知りたい方へ
まとめ|ピリピリは“神経痛×GSM”が多い。悪化前に受診を

デリケートゾーンのピリピリ感は、
「年齢のせい」
「一時的なもの」
と自己判断してしまうことが一番の落とし穴です。
特に更年期以降は、神経痛的な過敏さと、エストロゲンの分泌低下による皮膚や粘膜の乾燥トラブルが重なり合っていることが非常に多いのです。
放置すると慢性化し、皮膚が硬くなって治療に時間がかかることもあります。
逆に、モナリザタッチのような先進的な治療を知っていれば、ホルモン補充療法ができない方でも、粘膜をふっくらとした潤いのある状態に戻すことができます。
「こんなことで病院に行ってもいいのかな?」と迷う必要はありません。
むしろ、我慢しないで相談に来てくださることが、一番の早期解決への近道です。
痛みは感じ続けることで脳が学習をしてしまい「痛みがないのに痛みを作り出してしまう」ことにもつながりかねません。たいしたことがないうちに手を打つのがデリケートゾーンケアの鉄則です。
また、デリケートゾーンのお悩みは、私たち産婦人科の得意分野です。
恥ずかしがらずに、ぜひお気軽にご相談くださいね!
デリケートゾーンのお悩みは婦人科へご相談ください
